2009年のテーマは「クラウドコンピューティング」だと言われています。Amazon EC2はその中でも注目度NO1のサービスだと思います。EC2では仮想サーバーを簡単に立ち上げることができます。EC-CUBE工房でもさっそくEC2にEC-CUBEを構築してみました。
EC2のメリットはいろいろあると思うのですが、実際に触ってみてこんな点がよいと思いました。
・物理的にハードを準備するよりはすばやくサーバを準備できる。
・短期利用の場合、低コストで利用できる。改造のテストなどのために一時的に利用したい場合など、大変便利がよいです。
・複数サーバでのスケールアウト環境を簡単に準備できる。10台のWEBサーバの準備に1時間もかかりません。
EC-CUBEを利用したビジネスはスピードが命です。またはじめはアクセスが少なく、ある日爆発的にアクセスが来るというパターンが多いですので、インフラをフレキシブルに利用できるとありがたいです。そういった点で、EC2は魅力的なサービスだと思います。
EC2についてのよくある質問
EC2はまだまだ新しいサービスで、皆さんいろいろな疑問をお持ちのようです。EC-CUBE工房で把握している限り回答してみたいと思います。
Q ずばり、EC-CUBEは動きますか?
普通のサーバと同様に動きます。試してみました。
Q サービスは安定していますか?
1時間停止すると機会損失が数十万といった状況でなければ、EC-CUBEの運用には十分な程度、安定しています。
AmazonはSLA(Sercive Lebel Agreement)で99.95%の稼働率を保証しています。これは、99.95%動きますという意味ではなくて、99.95%動かなければ、その分の料金はお返ししますということなので注意です。実際、Amazonのサーバが2時間くらい停止したということは何度かあったようです。Amazonから出る情報では、全てのサーバトータルでいえば99.95%以上動いているらしいです。また、一定時間の停止はないまでも、再起動がかかったようだ、という話を耳にしたことがあります。仮想サーバが動いているハードウェアに異常が発生した場合、自動的に他のハードウェアに移動して再起動するような仕組みなのではないかというのですが、そのあたりのことはまさにクラウド(雲)の中です。しかし、それらの現象でデータロストしてしまったというような情報は今のところ見たことがありません。
Q サービスを一時停止するとデータが全て失われるというのは本当ですか?
インスタンスを止めるとき、イメージを保存していなければデータが失われます。
インスタンス(仮想マシンそのもの)を停止すると、そのときのハードディスクのイメージもなくなります。OSの再起動などではハードディスクのイメージは消えません。なので、インスタンスを停止するときは、S3というストレージのサービスにバックアップを取るという運用をしている人がほとんどです。通常、一度ECサイトを始めると、インスタンスを停止することはないと思いますので、あまり心配する必要はないと思います。
Q IPアドレスが変わるから使えないというのは本当ですか?
IPアドレスを固定するエラスティックIPというサービスがありますので、問題なしです。IPを確保しておきながら、インスタンスに割り当てずにいると、1時間に1セント費用が取られますが、割り当てている限りは無料です。インスタンスへの割り当ての変更を月に100回以上実施すると数セントほど費用がかかります。実質的には無料で固定IPアドレスで利用できます。
Q ランニングコストはどれくらいかかりますか?
EC2は従量課金ですので、アクセス数によって変わってきます。
例として月間10万ページビューのサイトで考えてみたいと思います。1000ページビューあたり1件の注文がとれるとすると毎月100件の受注があります。その平均客単価が1,000円で、月間10万円の売上が上がるという、立ち上がったばかりのWEBショップを想定してみたいと思います。
まず、一番安いスモールインスタンスを起動した場合、1時間あたり0.1ドルかかります。レートをざっくり1ドル=100円として、1月で7,200円としておきましょう。
転送料金(出力)ですが、1GBあたり0.17ドルです。アクセス数は月間10万ページビュー、1ページあたり500KBと仮定しますと、そうすると50GB×0.17=8.5ドル=850円としておきます。
転送料金(入力)は、1GBあたり0.1ドルです。出力ほどは無いはずです。1/10の5GBとしておいて、5GB×0.1=0.5ドル=50円としておきます。
バックアップ用のS3のストレージ料金が1GBあたり0.15ドルかかります。EC-CUBEをインストールしたインスタンスを保存したら0.7Gほどでしたので、画像データがたっぷり3Gくらいあったとして、4G×0.15=0.6ドル=60円。
EC2とS3の間の転送量は無料だそうです。
ということで、大雑把な計算ですが、7,200+850+50+60=8,160円ほどということになります。
これがアクセスが100万ページビューになると、850円の部分が10倍と考えて、15,810円というあたりでしょうか。
現在、EC-CUBE工房ではときどきテストに使う程度なので、ほとんどインスタンスの料金だけです。
Q EC2は遅いと聞いたのですが本当ですか?
通信は正直なところちょっと遅いです。理由は、サーバパークがUSAの東部にあり、物理的に距離があるからです。現在、EC2ではEU西部1箇所とUSA東部3箇所のどこかからしか物理的な置き場所を選べません。pingを打ってみたところ、東京から広島のデータセンターにおいているサーバに打つと20ms弱で帰ってきましたが、EC2のサーバからは200msかかりました。ただ、EC2にインストールしたEC-CUBEについて、数人のお客様に見ていただいていますが、そんなに遅くはないねぇという反応です。
日本か、近いアジアの国にサーバーパークができることを期待したいです。
QAは以上にしたいと思いますが、百聞は一見にしかずです。EC-CUBEインストール済みのAMIを公開しますのでご自身試してご覧になるかEC-CUBE工房で動かしているEC2上のEC-CUBEの実物を見てみてください。
当工房のEC2のEC-CUBEはときどき止めたり実験に使ったりしてますので、現時点では問い合わせいただいた方のみにURLをお知らせします。
いずれにしても、このようなサービスの選択肢が増えたということはうれしいことですね。